橋本 恭子
前期に「台湾文学」、後期に「比較文化論」を担当します。
大学時代はフランス文学を専攻していましたが、フランス留学中に中国や韓国、ベトナム、タイからの留学生と出会い、アジアに関心を持つようになりました。その後、アジアから日本の近代を見直したいと考え、台湾に留学し、比較文学者島田謹二の台湾時代に焦点を当て、ポストコロニアルの観点から日本統治期の文学を研究しました。修士課程と博士課程の約10年をかけてこのテーマを完成させた後、戦後台湾の女性文学とLGBTQの文学に研究対象を広げました。その後、台湾のホームレス10人とソーシャルワーカー5人のオーラルヒストリーをまとめた李玟萱著『私がホームレスだったころ』を翻訳する機会に恵まれ、貧困をテーマとした文学も新たな研究テーマになりました。そこで、前期の授業では、「マイノリティと文学」のタイトルで、性的マイノリティ、先住民族、ホームレス、貧困女性、セックスワーカーを文学はどのように描いてきたかを考察します。後期の授業では、文学作品だけでなく、映画やグラフィックノベル、音楽などを通し、移民・難民、貧困、障害、ジェンダー、セクシュアリティなど、現代社会が直面している共通の課題を比較文化的観点から国境横断的に考察していきます。
【日本社会事業大学、津田塾大学、東洋大学、駒澤大学非常勤講師。1980年学習院大学卒、1986年フランス・パリ第八大学文学部フランス文学科修士課程修了、2003年台湾国立清華大学中文研究所修士課程修了、2010年一橋大学言語社会研究科博士課程修了。学術博士。単著に、『《華麗島文学志》とその時代―比較文学者島田謹二の台湾体験』(三元社、2012年2月)、『島田謹二――華麗島文學的體驗與解讀』(涂翠花・李文卿訳、台湾:台大出版中心)。共著に、「東アジアにおけるレズビアン・フェミニズムの運動・理論・文学――その歴史と経験の共有は可能か?」(佐野正人編著『思想・文化空間としての日韓関係 東アジアの中で考える』、明石書店、2021年3月)。訳書に、張小虹著『フェイクタイワン――偽りの台湾から偽りのグローバリゼーションへ』(東方書店、2017年5月)、李玟萱著『私がホームレスだったころ――台湾のソーシャルワーカーが支える未来への一歩』(白水社、2021年7月)など)】